創立50周年記念誌より みんなでつくろう 鼓笛の響き〜 相模原市少年鼓笛バンド連盟 50周年の挑戦 〜
平成29年に発行された創立50周年記念誌より掲載いたします。
実践論文
みんなでつくろう 鼓笛の響き
〜 相模原市少年鼓笛バンド連盟 50周年の挑戦 〜
Ⅰ はじめに
現在、相模原市少年鼓笛バンド連盟(略称、相鼓連)には、小学生隊が 11 隊、中高生のリーダー研修会が1隊の合計 12 隊が加盟し約 250 人の隊員が活動を推進しています。
相模原で最初に鼓笛隊が生まれたのは向陽鼓笛隊で、昭和 40 年のことでした。向陽鼓笛隊はその年の 10 月の市民体育祭に単体で参加し、堂々の演奏と行進を披露しました。それが契機となってか、市内各地に相次いで鼓笛隊やバトンチームが生まれていったのです。昭和 39 年に開催された東京オリンピックでの鼓笛隊の活躍も、次々に隊が結成された要因になったようです。
当初の鼓笛隊は、子ども会の1部門として始められたものが多かったようです。
各地域で活動する複数の増加、活動の活発化とともに、行事への参加依頼も増えたため、出場の調整をする機関の必要性が生まれてきました。また、各隊の協力、技術向上のための講習会も切望されるようになり、連盟が必要となってきました。
こうして、市教育委員会の助言、協力を得ながら、昭和 41 年 6 月 20 日に連盟設立のための総会が開かれ、発足するに至りました。
以来、以下の指導方針を守り、健全な子ども達を育成すべく、50 年の歩みを続けてまいりました。
Ⅱ 相鼓連指導方針
相鼓連は音楽活動を基に望ましい人間と社会を創造していくことをめざし、鼓笛活動を通じて地域と連携を図り、青少年の健全育成を目的とした社会教育団体である。
1 指導綱領
第一、私たちは、鼓笛活動を通じて音楽教育の発展と正しく健やかな青少年の人格の育成に努める。
音楽を行動化し、音楽の持つ本質的な喜びと人間本質の中にひそむ芸術性を引き出し、自ら演奏して共に喜び合う。知らず知らずのうちに培われる豊かな情操美感や責任と協調性を身につけ、厳しい訓練によって体力を増進させ、人間形成の場とする。
第二、鼓笛相互の親睦を図り、常に研究と実践を重ねて技術の向上に努める。
相鼓連全体の指導者としての自覚を持ち、いささかも差別感や偏見を持つことなく、広く隊員を愛し相鼓連全体の発展のために貢献する心構えでなければならない。
色々な楽器が寄って素晴らしいハーモニーで人の心に感動を与えるように役員と指導者はもちろん、隊員相互の間にもあっても心のハーモニーによって望ましい協調と品格のある団体でなければならない。
2 相鼓連三つの目標
- 集団活動による生活指導
- 豊かな情操感情を培う
- 体力の増進
3 指導者は、相鼓連三つの目標を旨とし、次の指導指針に従う
- 指導者は、目的をよく認識し、指導法・リズムバンド奏法・楽器奏法・パレード・ドリル法・歩行方法などに研鑽し、愛情と品格を持って指導に当たる。
- 指導者は、鼓笛音楽やその活動の長所と短所をわきまえて、特性を活かし、進んで研究工夫し、改善に努める。
- 指導者は、青少年の自主性を尊重し、独創性を育て、つとめて公共愛の芽生えを助ける。
[鼓笛まつり開会式]
Ⅲ 事業の実践
1 成果発表事業について
- 鼓笛まつり
鼓笛まつりは毎年3月に市民会館で開催され、今年度で 48 回目を数えます。相鼓連が結成された当初は、各隊の出演行事が秋に終了してしまい、翌年の春までは練習がなくなり、日常活動が中止してしまう傾向がありました。
子どもたちの活動を休止しないで、目標を持って練習に励むようにという願いを込めて生まれたのが、年間の活動の集大成の場としての鼓笛まつりでした。
昭和 44 年の3月に第1回祭りが開催されました。第4回以降、教育委員会が主催し、相鼓連が主管する形で、市の援助が得られるようになりました。
鼓笛祭りは隊員にとって最も晴れがましい舞台であり、最も緊張する場面でもあります。多くの観客を前にしての演奏は貴重な経験となり、その一つ一つが深く脳裏に刻まれていきます。また、他の隊の演奏に接することにより、多くの教訓を受け、次の年への取り組みの意欲が生まれ、目標が定まっていくわけです。 - ドリル大会
昭和 55 年夏、東京の武道館では全国鼓笛バンド連盟の全国大会が開かれました。相鼓連のジュニアリーダー養成講習会の6年生によるドリル演奏が、武道館の広い会場に繰り広げられました。この素晴らしい体験と役員や指導者の感激から、「相鼓連でも広い会場で思いっきりドリルをやららせる機会を持ちたい」という声が上がりました。
昭和 56 年に市立総合体育館が完成を祝う落成式に、その年の6年生がドリル演奏を披露することができました。そして、この年の12月に第1回のドリル大会を開催することとなりました。年々各隊が刺激し合い、すばらしいドリル演奏を見せてくれるようになっています。
鼓笛まつりのテーマは「みんなでつくろう 鼓笛の響き」。ドリル大会のテーマは「みつめよう音と動きのハーモニー」。それぞれ違う立場で鼓笛活動を披露する場となりました。
相鼓連の活動・各隊の活動の充実のために果たしてきた「鼓笛まつり」と「ドリル大会」の役割は、極めて大きいものです。今後も相鼓連の重要な二つの柱として、また隊員の大きな目標として発展させていかなければなりません。
[ドリル大会開会式]
2 研修会・講習会
- ジュニアリーダー養成講習会
鼓笛隊の指導者は、音楽技術の指導だけでなく、生活指導や仲間づくりまで、細やかな心づかいが要求されます。しかも、休日返上で献身的に活動できる有能な指導者の確保は、共通の課題です。将来的な指導者の確保を展望し、現在の隊の活動の充実を目指して、ジュニアリーダー養成講習会が開催されるようになったのが、昭和 44 年のことでした。
その年は恋の窪庭園で、相鼓連は各隊の6年生で編成したチームを名古屋で開催される中央大会に派遣しました。猛暑と強行日程でしたが、充実した演技を披露でき、楽しい思い出も作れました。その年より、6年生全員を対象として、ジュニアリーダー養成講習会を毎月1回の割合で開くようになりました。
各隊の6年生隊員を対象に、指導者の補佐として活動できるリーダーの養成を目指しました。主に基礎知識についての講習、仲間づくり、パート演奏演技の習得をおこないました。
6年生になるまでに、各隊で積み上げてきた演奏の技能や経験はめざましく、月一回の練習ではあっても、最高学年であるジュニアリーダー隊の演奏・演技は素晴らしい仕上がりとなっています。ドリル大会や鼓笛まつりでの姿は、下級生の手本となり、憧れの存在です。
夏期合宿の中で、リーダー研修会の中高生とジュニアリーダー隊の6年生が成果を見せ合う場面があります。先輩である中高生が見せる演奏には迫力があります。それに負けまいと、ジュニアリーダー隊が一生懸命練習したドリル演奏を発表する姿は、見ている役員や育成会の皆さんにとって、感動する場面となっています。 - リーダー研修会
ジュニアリーダー養成講習会修了者を対象として、希望する中高生を対象としておこないます。基礎練習を中心に講習し、隊での活動の進め方などを研修し、各隊で練習の時に役立つことを目的としました。基本奏法・基礎知識、パレード技術の基本講習、下級生の接し方等を含め、一つのグループとして隊を組織し、実践を通して学んできました。
中学生になると部活動のために、小学生隊員の面倒をなかなか見られないなどの悩みもあります。さらに充実した研修会にするためには、指導者の確保や指導内容の充実、育成会役員の協力体制の確立など、様々な課題をかかえています。しかし、長い目で見つめながらしっかりと歩みを続けなければならない大切な活動です。
[リーダー研修会の演奏]
- 楽器初心者講習会
ドラム、管楽器、指揮等を担当する初年度の隊員が対象です。基本的な奏法をはじめ、基礎練習の仕方などデモ演奏をみせることを目的としました。
初心者講習会と同時開催をおこないました。加盟全体の隊員が対象です。基本的な奏法の共通化・連盟指定曲の合同練習・ドリルの動きの共通化をはかることを目的に指導をおこないました。隊員が一同に会し、指定曲の練習を通して総合相互交流を行うことができました。 - 合同講習会
相鼓連全体の演奏技術等のレベルアップのために、指導者相互の交流をおこない、連盟の共通理解を図りました。また時代を担う次世代の健全育成に役立つための社会教育活動を理解し、活動に生かすこととしました。指導者相互の情報交換と基礎知識の習得など、連盟の発展をふくめ、指導者の資質の向上と隊員指導に役立つものにしようとしました。 - 指導者研修会
各隊育成会の役員を対象として、鼓笛活動の魅力づくりと、教育団体としての活動を目指す研修をおこないました。隊員の確保など各隊の抱えている課題を出し合うなど、共通の悩みを解決する場にもなりました。鼓笛隊の活動意義、各隊の活動の工夫、これからの社会教育について話し合いを深めてまいりました。 - 育成会研修会
- 特別委員会(実行委員会)の設置
隊員たちが活躍する行事では、育成会代表者による実行委員会を組織して運営を行っています。行事のスムーズな運営と育成会相互の交流、また鼓笛活動の幅広い理解をねらいとしています。- ちびっ子広場(市民桜まつりまたは若葉まつり)
市民まつりに実施しました。主催者の内容を検討し、今まで気づき挙げてきた実績を大切にして協力参加しました。 - 夏期合宿
ジュニアリーダー養成・リーダー研修の一環として、中央小学校をお借りして、3日間実施しました。 - 親子ふれあい広場
市の主催行事に協力参加しました。昨年度予定していた模擬店は、雨のため中止となりました。 - ドリル大会・鼓笛まつり
当日の運営分担を行いました。
- ちびっ子広場(市民桜まつりまたは若葉まつり)
[桜まつり出演]
3 市の行事への参加
パレード等で参加している市の関係行事には、「市民桜まつり」「親子ふれあい広場」「相模原秋の大市民祭」「相模ねぶたカーニバル」「リサイクルフェア」など様々あります。これらの行事には全てを優先して参加しています。
市民桜まつりには、第1回以来、全体隊が参加しています。1日目は近隣隊が、2日目には全隊がパレードし、催しのメインイベントとなっています。開催時期が4月なので、各隊とも旧体制でのぞむので、技術的にもチームワークも最良の状態で演奏できます。
親子ふれあい広場は、昭和 58 年から教育委員会の主催で始まった行事です。全隊が参加して、公園内を自由にパレードしたり、各種の催しにも参加したりして楽しんでいます。
[橋本七夕まつり]
4 地域に親しまれている鼓笛隊
出演要請については会社祭の出演依頼をもとに出演の機会均等図っています。地元の独自性等により近隣隊に依頼することもあります。地域と一体となった活動が大切と考えます。隊員の健康等も考慮しながら、積極的な参加がのぞまれています。
現在、市の行事以外にも鼓笛隊の活躍の場があります。「泳げ鯉のぼり」「大凧まつり」「上溝夏祭り」「橋本七夕まつり」をはじめ、各地域の商店会や自治会夏祭りへの出演など、地域になくてはならない存在となっています。
5 ザよこはまパレード(国際仮装行列)
横浜のゴールデンウィークの目玉と言えば、「ザよこはまパレード」!華やかなマーチングバンドやダンスチームが多数参加する賑やかなパレードには、全国から大勢の方が見物に訪れる大人気イベントです。毎年5月3日は、ジュニアリーダー隊として最後の出演となっています。
毎年のテーマに沿って、隊服にテーマ色のバラを飾り、仮装しての演奏です。山下公園のマリンタワー前から出発し、赤レンガ倉庫前を左折して馬車道を通って、1時間半に渡るパレードです。歩道を埋め尽くす大勢の観客から歓声をもらいながらの演奏は、とても爽快な気分です。このような大きな行事に参加できる喜びは、子ども達にとって大きな自信につながると考えられます。
[山下公園前をパレード]
Ⅳ 今後に向けて
1 社会教育への貢献
相鼓連は、社会教育の青少年関係団体に所属しています。これは、団体に所属している一人一人の子ども達が、自発性に基づいて多面的な活動を展開し、特に仲間との集団活動を通じて、学校や家庭では期待しにくい学習体験を持つことによって、子ども達の成長を促すところに大きな目的があります。
鼓笛活動は、地域社会の中で、異年齢の子ども達が自発的に参加することで進められる活動として、大きな教育効果を期待されています。
社会教育では子どもの様々な要求を指導者や育成会が吸い上げることによって、比較的柔軟にプログラムを選択できるという特徴があります。「鼓笛まつり」にお年寄りを招待したり、自然保護のための一円玉募金といった事業は、鼓笛活動と一見何の関係もなさそうに見えながら、じつは子ども達のために選択されたプログラムであり、そうしたことをできることが正に社会教育的な活動であるわけです。
このように、指導者や育成会の努力によって、子ども達の自発性を喚起しながら、多面的な活動が展開できるため、子ども達の全人格的な成長にとって非常に意義あるものになると考えられます。
2 鼓笛活動を支えるもの
鼓笛活動は、単に演奏技術の向上だけを目指したものではありません。これまで述べてきたとおり、音楽を通じて知育の向上、パレードなどによる体力の向上、奉仕活動による情操教育など三つを柱にした全人格的な教育活動と言えます。この活動は、隊員、指導者、保護者が一体となって初めて実現可能となります。
私たちの相鼓連には、休日を返上して鼓笛の指導に当たるという、隊員を思う情熱溢れる指導者がたくさんいます。
「厳しい暑さ寒さに耐えながら練習に励む子ども達の姿は、美しいものです。その姿を見ると、親として惜しみない協力をしてあげたいと思います。」と活動を支える育成者の協力があります。これらの人たちに見守られ、子ども達は厳しい練習に耐え、高いレベルの鼓笛活動を繰り広げるまでに成長してきています。
3 教育は共有との観点
子ども達を取り巻く教育環境は、多様化しており、保護者の教育観も様々です。様々なスポーツや文化活動などを体験できるようになっています。
しかし鼓笛活動には、子ども達と一緒に成長して行くことのできる社会教育活動としての魅力があります。音楽が大好きな子ども達とともに、「鼓笛が大好き」という気持ちを広げていくことができるよう、今後とも相鼓連の活動に励んでまいります。
[鼓笛まつりで各隊の発表]
<参考文献>
- 相鼓連創立 10 周年記念誌
- 相鼓連創立 20 周年記念誌
- 平成 27 年度相鼓連総会資料